これが競馬だ

先日震災から11年を迎えた3/11金曜日の夜、仕事でイライラしていたこともあり、何か釈然としない煮え切らない心のモヤモヤを取り払えずにいました。なんとか切り替えなければ。物事を理路整然と考えたい。常にいろんなパターンを用意しておいて引き出しを開くだけにしておきたい。美味しいものを食べている最中に答えを出して明日に向かいたい私には珍しく、煮え切らないこのモヤモヤはなんなんだ?と自問自答の繰り返し。これは駄目だなと、堪らず馬主さんにお願いして競馬場へ連れて行ってもらうことにしました。

返事が来たのは翌12日の朝、2鞍を乗り終えたころ。それから急いでシャワーを浴び、久しぶりのスーツに袖を通し、名古屋駅に12時過ぎには到着予定。すでに東海道新幹線車内でロジヴィクトリア号の勝利の朗報。体調を崩されて家で療養中だった久米田オーナーと牧場勤務時代の同僚でもある新冠橋本牧場橋本社長、厩舎開業前は一緒に早来で汗を流した新開調教師の喜びの声。久しぶりの名古屋への道のりはなんだか眩しく感じる。

3年ぶりの中京競馬場は快晴でした。そもそも競馬場に行くのが昨年の盛岡競馬場でのダービーグランプリ以来。お客さんの数が想像していたよりも多く、”ちゃんと”歓声も上がっていました。コロナ前は毎週のように行っていた競馬場。預託、育成させていただいた馬を馬主さんと一緒に応援する。なかなかうまくいかない分、勝ったときの喜びは何事にも代えがたい。そんな中、中京メインの中京スポーツ杯をプリマジア号が快勝。

震災から11年。
時代は変わり当たり前にできるはずのことが当たり前でなくなってしまったように。なかなか行けなく”遠くなってしまった”近い競馬場に久しぶりに訪れ、預託馬の勝利を馬主さん、調教師さんと分かち合える幸せ。今回お世話になったプリマジア号藤沼社長はJRAでオープン馬になったのは長い馬主人生で初めてのことだそう。JRA、NARの馬主さんというだけでも凄いのに数々の成功をされている馬主さんがこぞって土日平日に競馬場を訪れ、熱狂している競馬、馬たちって凄いと思いませんか?

大変で地味な牧場の仕事ですが、たまに訪れるこういう瞬間がこの仕事の醍醐味だなと久しぶりに感じれた春の日の1日でした。

2022年3月20日
株式会社Tomorrow Farm代表取締役 齋藤野人

大人たちの責任

 
世界のどこかで砲弾が飛び交う昨今とても寒い日が続いた冬を抜け、先週あたりから寒さが和らぎ春の訪れを感じる今日この頃皆さま如何お過ごしでしょうか?現在の世の中を俯瞰的に見ているとマスクをつけてやりたいこともできない子どもたちや、飲みにも行けない若者たちのことがつくづく本当に幸せなのか?それともこれが当たり前になるのか?と危機感を感じております。

3月に入り、4月からの新卒スタッフたちとのやり取りが活発になってきました。この冬Tomorrow Farmでは過去の反省を踏まえ、うちでもっと活躍できたスタッフもいたのでは?との観点からスタッフの育成の見直しを行い、2月中旬から新たにマネージャーを迎え入れ新体制を作りました。これは私も含め体育会系や職人気質の育成ではもう人は育たないだろうとの判断です。

少しずつでも変わらないことには前には進まない。幸いなことにここ数年応募はたくさんあるのに残念ながらそれを迎え入れる体制になっていないのではないか?そんな中でも踏ん張ってきた若いスタッフも何人かいる中でさらに新しい力が加わる職場に生まれ変わるように。そうなればうちの自慢でもあるレジェンドたちの経験が生きてくる。

我々の仕事はありがたいことにコロナの影響を最小限に、毎日業務に励むことができる数少ない仕事なのではないかと思います。噛み合わなかった歯車が噛み合うように、ぜんまい仕掛けを作る作業も大事になってきました。スタッフも増え春から20人規模になってきたTomorrow Farmは今までのトップダウン方式からの転換期を迎えています。育成に懸ける想いはそのままに、若い力が馬に打ち込む環境を作る。

ウクライナ情勢でたくさんの人々が命を落とし、コロナ禍でたくさんの方々が仕事を失っている現在において大好きな馬に携わりお金を貰うことができる。その中で日々小さな幸せを感じれる職場を作り上げるために精進の毎日は続きます。

2022年3月6日
株式会社Tomorrow Farm 代表取締役 齋藤野人